「消防や警察は助けに来れない」——これが現場の現実です。
21年間、消防士・救急救命士として働いてきた私が、本当に使える地震対策をお伝えします。
はじめに|消防は助けに来れない
地震などの突発的で広範囲の災害には、「消防や警察は助けに来れない」と思ってください。
消防署も同じように被災しています。助けに行くための道路が寸断されていることもあります。自分は自分で守るしかないと考えてください。
地震発生後、携帯は繋がりません。ネットで情報や対処法を検索することもできません。今のうちに地震が起きた時の行動を計画してください。
この記事では、私の現場経験から事前に準備しておくと良いことをまとめました。誰か1人でも命が守られたら幸いです。
緊急援助隊として見た能登半島地震のリアル
令和6年1月1日、能登半島地震で石川県に派遣されました。現地で見たのは、想像をはるかに超える過酷な現実でした。
以下は私が実際に現地で経験したことです。テレビや報道では伝わらない「現場のリアル」をお伝えします。
🚗 道路の寸断|通常3時間の道のりが17時間に
高速道路で富山県まで行き、そこから下道で石川県珠洲市を目指しました。
富山県から石川県珠洲市まで、通常約3時間の道のりが、地震当日は道路の寸断や大渋滞により約17時間かかって到着しました。一般の方が避難しようとしても、まともに車が動かせない状況でした。
🔌 インフラの停止|電気・ガス・水道すべて止まった
現地では電気・ガス・水道がすべて止まっていました。洗濯もトイレも使えず、冷暖房もスマホの充電もできません。
能登半島地震では、私が派遣された石川県珠洲市で1月7日頃に約15cmの積雪がありました。冷暖房なしでは非常に過酷な環境でした。高齢者や体の弱い方には命に関わる状況です。
📱 通信手段|ドコモ・ソフトバンク・au全滅
私がいたエリアではドコモ・ソフトバンク・auすべて繋がりませんでした。楽天モバイルだけが繋がりました。キャリアが1社に集中していると、全員が連絡できなくなります。
🧴 衛生用品がない|手も洗えない環境
水道が使えないので手を洗ったり身体を清潔にすることができません。感染症リスクが急激に高まります。
😴 睡眠が取れない|余震・不安・環境の悪さ
環境の悪さ・精神的な不安・余震などで十分な睡眠が取れませんでした。寝てもすぐに起きてしまいます。体力が奪われ、判断力も落ちていきます。
これが能登半島地震の現場のリアルです。次のセクションでは、これらの困難に対して今日からできる事前準備をジャンル別にお伝えします。
地震が起きた時に困ること|ジャンル別の事前準備
🚰 生活面|水・食料・衛生
水は3日分では足りない|1週間分を備蓄する
一般的に「水は3日分備蓄しましょう」と言われています。しかし現場を経験した私の答えは違います。
能登の現場では断水が1ヶ月以上続いた地域もありました。行政から支援物資が届いたのは発災から数日後。3日分では命を繋ぐことすらできません。
1人1日3リットル×7日分が最低ラインです。4人家族なら84リットル必要です。
お風呂のお湯を次の日まで捨てない
「そんなに水を備蓄できない」という方に知ってほしい節水術があります。
断水すると飲み水より先にトイレが使えなくなります。お風呂の水があればトイレを流せる。これだけで避難所に行かずに自宅で過ごせた家族を何組も見ました。
お風呂のお湯は次の日に入るまで捨てないだけでOKです。200リットル前後が常にストックされます。さらにこの4つの技で水を節約できます。
- お風呂のお湯を捨てない(トイレ・生活用水に使える)
- 割り箸を大量備蓄(食器を使わず洗い物ゼロ)
- ラップを食器に巻く(食器が汚れず水不要)
- ソーラー充電器を用意(停電でもスマホ・情報を維持)
非常食はアルファ米一択
賞味期限が5年以上・水でも作れる・温めなくても食べられる。災害時はガスも電気も使えないことが多い。そんな環境でも食べられる非常食はアルファ米一択です。
衛生用品を備蓄する
水道が使えない環境では、衛生用品の備蓄が命を守ります。
- ウェットティッシュ(大量)
- 除菌アルコールジェル
- 体拭きシート
- ドライシャンプー
- 携帯トイレ(50回分以上)
- 使い捨て手袋・マスク
睡眠対策も備えておく
- 耳栓(避難所の騒音対策)
- アイマスク(照明対策)
- 寝袋(床での就寝に対応)
- エアマット(体への負担軽減)
余震のたびに起きるのは仕方ありません。短時間でも横になるだけで体は休まります。昼間に仮眠を取る習慣を意識してください。
🔌 インフラ面|電気・ガス・暖房
ポータブル電源+ソーラーパネルを用意する
停電が長引いた時、スマホの充電・照明・情報収集ができなくなります。ポータブル電源があれば電源を確保できます。
- ポータブル電源(Jackery 240以上推奨)
- ソーラーパネル(停電が長引いても充電できる)
- カセットコンロ+ガスボンベ(多めに備蓄)
- 湯たんぽ・カイロ・寝袋(暖房なしに備える)
寝室の備えが最重要
統計上、住宅火災・地震による死亡事故は深夜から早朝に集中しています。就寝中は判断力が落ちる。暗闇でも即座に動けるよう、寝室の備えが最優先です。
- 枕元に懐中電灯を置く
- 枕元にスリッパを置く(ガラスの破片対策)
- コンセント式の停電時自動点灯ライトを設置
- 寝室のドアを開けて寝る(脱出経路の確保)
家具固定はやり方が重要
固定しているつもりでも、器具の取り付け位置が間違っていると意味がありません。家具の上部だけ固定して下が固定されていない家庭を何度も見ました。正しいやり方で固定してください。
家具は重心が上にあるため、上部を壁と固定することが最重要です。下部だけの固定では地震の揺れで上から倒れてきます。
消火器はキッチンに置かない
火元がキッチンの場合、炎と煙でキッチンには近づけません。消火器を取りに行けずに逃げるだけになった現場を何度も見ています。消火器は逃げ道の近くに置いてください。
🚗 移動面|交通・通信
車のガソリンをこまめに給油する
能登では発災翌日からガソリンスタンドに長蛇の列ができました。給油できたのは発災から数日後。その間、車が動かせず避難も物資の運搬もできない人を大勢見ました。
ガソリンは半分を切ったら給油するルールを習慣にしてください。
通信手段を分散させる|楽天モバイルを持つ
能登の現場ではドコモ・ソフトバンク・auすべて繋がりませんでした。楽天モバイルだけが繋がりました。メインキャリアとは別に楽天モバイルをサブ回線として持つことをおすすめします。
- 楽天モバイルをサブ回線として持つ
- 災害用伝言板(171)の使い方を覚える
- ラジオで情報収集できる準備をする
- 家族の集合場所を事前に決めておく
👨👩👧 家族・連絡面
集合場所を決めておく
災害時は電話が繋がらない。LINEも使えない。家族と離れ離れになった時、集合場所を決めていない家族は再会までに何日もかかるケースを何度も見てきました。
集合場所は2つ決めておくのが理想です。
- 第1集合場所:自宅近くの公園・広場など
- 第2集合場所:少し離れた避難所・学校など
- 子供が一人でも行ける場所にする
- 定期的に家族で確認する
まとめ|今日からできることを一つだけ始めてください
完璧な準備は必要ありません。今日から一つだけ始めてください。お風呂のお湯を捨てない、ガソリンを満タンにする、家族の集合場所を決める——どれか一つやるだけで、あなたの命を守る確率が上がります。
- 家族の集合場所を決めた
- 水を1週間分備蓄した
- お風呂のお湯を毎日捨てない習慣にした
- アルファ米を備蓄した
- ガソリンをこまめに給油するようにした
- 消火器をキッチンから移動した
- 寝室に懐中電灯・スリッパを置いた
- 家具の上部を壁に固定した
- 楽天モバイルをサブ回線として契約した
- 携帯トイレ・ウェットティッシュを備蓄した