消防士による地震対策リスト|緊急消防援助隊での実体験をもとに解説

地震対策
地震対策

「消防や警察は助けに来ない」——これが現場の現実です。
消防士・救急救命士として働いてきた私が、現場のリアルと今日からできる地震対策をお伝えします。

はじめに|自分の命は自分で守るしかない

地震などの突発的で広範囲の災害には「消防や警察は助けに来ない」と思ってください。助けに行きたくても「行けない」のです。大地震発生後はいつもの何十倍もの119番通報があり、全て対応することができません。また、消防署も同じように被災しています。助けに行くための道路が寸断されていることもあります。そのため、自分の命は自分で守るしかないのです。

地震発生直後は携帯が繋がりにくいため、ネットで情報を検索することもできません。だからこそ今のうちに準備をしてください。この記事では「今すぐできる準備」から順番に紹介していきます。順番に実行するだけで、あなたと家族の命を守る確率が大きく上がるはずです。

緊急消防援助隊での実体験|現場でのリアル

2024年(令和6年)1月1日、私は当直勤務中でした。16時10分、能登半島地震が発生し緊急消防援助隊として石川県に派遣されました。事前に準備をしていた私ですら、想像をはるかに超える過酷な現実でした。

🚗 道路の寸断

高速道路で富山県まで行き、そこから下道で石川県珠洲市を目指しました。富山県から珠洲市まで通常約3時間の道のりが、地震当日は道路の寸断や大渋滞により約17時間かかって到着しました。緊急走行でも通常の6倍近くの時間が掛かりました。

🔌 インフラの停止

電気・ガス・水道はすべて止まっており、トイレも洗濯も使えません。冷暖房もスマホの充電もできない状態が続きました。私が派遣された石川県珠洲市では、1月7日頃に約15cmの積雪がありました。高齢者や疲労の溜まった体には非常に過酷な環境でした。

📱 通信手段

私の担当エリアではドコモ・ソフトバンク・auがすべて繋がりませんでした。楽天モバイルだけが繋がりました。これは現地で実際に確認した事実です。メインキャリアとは別にサブ回線があると便利だと感じました。

🧴 衛生用品がない

水道が使えないので手を洗ったり身体を清潔にすることができません。手が洗えないことで感染症のリスクが急激に高まります。冬の乾燥した時期も重なり、風邪やインフルエンザを患った方が数名いました。

😴 睡眠がとれない

環境の悪さ・精神的な不安・余震などで十分な睡眠が取れませんでした。寝てもすぐに起きてしまいます。災害時こそ正しい判断が必要なのに、睡眠不足は判断力を著しく低下させます。事前に耳栓・アイマスク・寝袋を備えておくだけで大きく違います。

🔴 今日やること|低コスト・今すぐできる7つ

① お風呂のお湯を捨てない習慣を始める

断水するとトイレが流せなくなります。それ以外にも水が必要という場面は意外と多いです。しかし断水していると備蓄用の貴重な飲み水を使わなければいけません。お風呂のお湯を常に貯めておく習慣を始めてください。入浴後すぐにお湯を捨てず、次の日の新しいお湯を貯めるタイミングで交換するイメージです。お風呂のお湯は一般的なサイズで200リットル。2リットルのペットボトル100本分の水を賄うことができます。

② 枕元にスリッパ・懐中電灯を置く

地震による死亡者数は、地震の発生が深夜から早朝の場合に多くなります。停電の暗闇では出口がわからず逃げ遅れたり、割れたガラスの破片を踏んで動けなくなることがあります。枕元にスリッパと懐中電灯を置いておくだけで、いざという時に安全にすぐ行動できます。

③ 家族の集合場所と集合時間を決める

災害時は電話もLINEも繋がりません。集合場所を決めていない家族は、再会まで何日もかかる場合があります。集合場所は2か所決めておくのが理想です。

  • 第1集合場所:自宅
  • 第2集合場所:自宅からある程度距離のある公園やスーパーの駐車場など

近くの建物や公園を選ぶと、自宅が津波被害を受けた場合に同じように被害を受けている可能性があります。学校など広い場所を選ぶ場合は「グラウンドのサッカーゴール付近」のように具体的な場所まで決めてください。雨や雪が降っている可能性もあるので屋根のある場所がおすすめです。

場所だけを決めても家族が来るまでずっと待ち続けることになります。10時と17時のように、集合する時間もあわせて決めておいてください。基本は第1(自宅)に集合し、自宅が壊滅的な被害を受けて危険な場合は第2に集まる、という使い分けがおすすめです。

④ 重要な連絡先をメモ帳に書いておく

スマホの充電が切れると連絡先がすべて消えてしまいます。家族などの電話番号を紙のメモ帳に書いておいてください。連絡先が必要になる例を挙げます。

カテゴリ 連絡先の例
家族・親族 配偶者・両親・兄弟姉妹・離れて暮らす祖父母
職場・学校 勤務先・子供の学校・保育園・幼稚園
医療関係 かかりつけ医・専門病院・子供のかかりつけ小児科
近隣・地域 仲の良い近所の方・自治会や町内会の連絡先
その他 遠方の親族・知人・保険会社・大家や管理会社・動物病院

⑤ 重要書類をコピーして保管する

通帳・保険証券・権利書などは、災害後の手続きに必要になります。火災や津波などの二次被害で消失する可能性もあるため、コピーを取り、できれば自宅とは別の場所に保管してください。

  • 最重要:通帳・キャッシュカード、健康保険証、火災保険・地震保険証券、お薬手帳
  • 重要:運転免許証・マイナンバーカード、権利書・賃貸借契約書、母子健康手帳
  • 余裕があれば:生命保険証券、医療保険証券、自動車保険証券、住宅ローンの契約書、パスポート

⑥ 子供に災害時の行動を教える

子供が一人の時に地震が起きることもあります。子どもに教えたい重要な行動の例です。

  • 机の下に隠れる、布団を頭までかぶる(頭を守る具体的な行動)
  • できるだけ靴を履く(ガラスなどが散乱していたら家の中でも靴を履く)
  • 外に飛び出さない(瓦・看板の落下に巻き込まれる危険がある)
  • エレベーターを使わない(停電で止まる可能性がある)
  • 揺れが収まったらまずドアや窓を開ける(逃げ道を確保する)
  • 大人や近所の人に助けを求める(一人で抱え込まず周囲を頼る)

小さい子供(幼稚園児〜小学校低学年)には「頭を守る」「地震が収まるまで動かない」などシンプルな行動だけを覚えさせてください。たくさん教えると咄嗟の事態でかえって何も行動できなくなります。

⑦ 消火器はキッチンに置かない

二次被害で火災が起きる場合、出火元のほとんどはキッチンです。炎や煙でキッチンに近づけず、消火器を取りに行けなくなります。キッチンから玄関までの動線上で素早く取り出せる位置に置いてください。

🟠 1週間以内にやること|生きるために最低限必要な9つ

① 水を7日分備蓄する

目安は1人あたり1日3リットルで計算してください。7日で21リットル、4人家族なら84リットルです。夏場は1人1日3リットル、冬場は1日2リットルが目安ですが、地震はいつ来るかわからないので多い方で計算してください。能登半島地震では断水が1ヶ月以上続いた地域もありました。一般的に「3日分」と言われていますが実際は全然足りません。ただし、お風呂のお湯が使える場合、飲み水以外はお風呂のお湯(約200リットル)で代用できるので夏場でも1日2リットルで大丈夫です。著者宅は5人家族(夫婦、子供3人)で108リットル(2リットル×6本×9箱)を備蓄しています。

② アルファ米を7日分購入する

目安は1人あたり1日3食で計算してください。7日で21食、4人家族なら84食です。職業柄たくさんの企業のアルファ米を食べましたが、ダントツで美味しいのは「尾西食品アルファ米」です。美味しさは圧倒的1位です。水でも十分美味しいですが、お湯で作った方がやはり美味しいです。ガスも電気も使えない環境で美味しく食べられる非常食として非常に優秀です。日本人は数日で米が恋しくなります。著者宅(5人家族)では100食を備蓄しています。

③ カセットコンロ+ガスボンベを購入する

お湯を沸かせるだけで生活の質が大きく変わります。沸騰したお湯だけでなく40度ぐらいのお湯を作れるだけでも大きく違います。冬場は特に重宝します。

④ 携帯トイレを50回分購入する

目安は1人あたり1日7回で計算してください。7日で約50回、4人家族なら200回分です。断水時はトイレが使えません。能登半島地震の現場で非常に不足していたのがトイレ用品でした。やむを得ず用水路に小便をしている人たちもいました。生理現象は我慢することができません。トイレ用品は災害初日から必要な重要品です。著者宅(5人家族)では200回分とおむつ100枚を備蓄しています。

⑤ 常備薬・救急セットを揃える

災害時は病院に行けません。常備薬は1週間分以上・救急セットを揃えてお薬手帳と一緒に保管してください。各々の持病で内容は変わりますが、外傷を負う可能性が高いので止血・包帯・消毒ができる商品は必須です。

⑥ 現金を2〜3万円用意する

ATMが止まりカードも使えなくなります。PayPayなどのスマホ決済も使えません。現金があると自動販売機を使うことができます(電気復旧後)。発災初期はコンビニやスーパーでレジが使えずおつりが出せない場合があるため、小銭があると便利です。

⑦ ラジオを購入する

停電・通信障害の中で正確な情報を得られる唯一の手段です。手回し充電・太陽光充電タイプがおすすめです。ネットではデマ情報が出回ります。情報の発信元が信用できるかを見極めてください。

⑧ 車にガソリンを給油する

能登半島地震では発災翌日からガソリンスタンドに長蛇の列ができました。給油制限により、数時間並んでも10リット

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